大自然の国カナダ
Scenes of Canada
カナディアン・ソーラーのふるさとカナダの、豊かな自然や野生動物、素朴なライフスタイルなどをご紹介します。
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陽だまりInterview | カナダ建国150周年記念対談 多文化主義、豊かな自然、先進的クリーンエネルギー… 150年目のカナダが大切にしてきたこと
オンタリオ州政府 駐日代表 デイヴィッド・パデュー氏
カナディアン・ソーラー・ジャパン株式会社 代表取締役 山本豊
カナディアン・ソーラーの故郷であるカナダは、今年建国150周年を迎えました。またカナディアン・ソーラーの本社があるオンタリオ州も設立150周年となります。これを記念して、カナディアン・ソーラー代表取締役が、オンタリオ州政府駐日代表をお迎えして対談を行いました。建国150周年へのカナディアンの想い、そして現在のオンタリオ州の先進的なエネルギー事情まで、たっぷりとお話をうかがいました。
多様性を尊重し、オープンであることそれがカナダ最大の強み
山本(以下Y) カナダは今年建国150周年ですね。大変おめでとうございます。7月1日がカナダの建国記念日「カナダ・デー」とのことですが、現地ではかなり盛り上がっているのでしょうね。
パデュー(以下P) はい。カナダ人は何かにつけカナディアン・フラッグを誇示したがるのですが(笑)、とくに今年の「カナダ・デー」はメープルの旗が翻り、大騒ぎとなるでしょう。付け加えるなら、カナダは1867年に建国しましたが、その時オンタリオも州として誕生したのです。つまりオンタリオ州も設立150周年を迎えるので、二重のお祝いとなります。
Y たとえばどんなイベントが行われるのですか?
P 首都のオタワでは、国会議事堂前の広場を中心に、様々な祝賀イベントが行われます。人気アーティストのコンサートや花火大会なども開催されます。またカナダ・デーの翌日には、オタワ川(英語圏オンタリオ州と仏語圏ケベック州の間に流れる川でオタワ首都圏はこの両岸に広がる)のアレキサンドラ橋が車両通行止めとなり、一面緑の芝生カーペットが敷かれピクニックスペースとなります。英語圏とフランス語圏をつなぐユニークなイベントですね。また今年1年間は、すべての国立公園が入場料無料となっていますが、これも記念の催しのひとつです。
![首都オタワでは国会議事堂前での衛兵パレードをはじめ、盛大なイベントが開催。観客もテーマカラーの赤と白の衣装で参加](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/2-IMG_1662-1024x576.png)
![セレモニーが行われるオタワの国会議事堂](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/4_H2A2544-1024x576.png)
![7月1日にはあらゆる場所でカナディアン・フラッグが翻る Photo: www.torontowide.com](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/3-120024_029rr-1024x576.png)
![夜には議事堂周辺で花火大会も開催 Photo: OTMPC/Joey Panetta](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/5-100005711-1024x576.png)
Y 多くのカナディアンが、150年という歴史に誇りを持っておられるのだと思います。日本とは国の成り立ち自体が異なりますが、カナダならではの感慨もあるのでしょうね。
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P そもそもカナダは多くの移民によって作られた国です。現在も、カナダ全体の人口20%は移民、つまりカナダ以外で生まれた人で構成されています。オンタリオの州都でもあるトロントではさらにこの比率が大きく、人口全体の50%が移民です。今回の150周年記念イベントの第一テーマも、「多様性と受け入れ」です。これは、150年にかかわらず、カナダにとってコアとなる部分です。1971年、ピエール・トルドー首相の時代に、カナダは世界で初めて多文化主義政策を導入しました。これは民族や肌の色、性別などにかかわらず、平等に生活できる社会を目指すものです。そして現在、その子息であるジャスティン・トルドー首相は「カナダの多様性は、その強みである」とし、ジェンダーフリーの文化や難民の受け入れなども含め、マルチカルチャリズムの推進にも力を入れています。
Y とても先進的な考え方ですね。実は日本も来年、明治維新から150周年となります。つまり鎖国の時代が終わり、国が世界に開かれてからようやく150年。近代国家としては、ある意味カナダと同じ年と言えるかもしれません。しかしながら、日本の場合、人口のほとんどを日本人が占めていることもあり、多様性という意味ではまだまだこれから変化していかなければいけない部分もある。この点、カナダに学ぶべきところはかなりあるように思います。
P 1867年〜1858年は、奇しくも両国にとってのターニングポイントだったのですね。開国というのは、われわれカナディアンにとってはとても大切なことに思われます。オープンにすることで多様性が生まれ、産業の発展、さらには国の発展にもかかわっていく。たとえばオンタリオ州ではハイテク産業が盛んですが、世界に門戸を開いているため、エンジニアやプログラマー、デザイナーといった才能を持った人々がいろいろな国から集まりやすくなっています。そしてそんな豊富な人材を求めて、世界の大手企業もオンタリオでビジネスを始める。オープンにすることこそ、成功の秘訣で、これがカナダの強みと言えます。
![様々な民族がそれぞれの文化を維持し、お互いに尊重しながら生活](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/7-VQ4D2083-683x1024.png)
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![ジェンダーフリーであることもカナダの特徴。LGBTのビッグイベント「プライドトロント」では、ジャスティン・トルドー首相もパレードに参加した](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/10-IMG_6324-1024x576.png)
![多くの移民が集まって暮らすカナダ最大の都市トロントは、多文化国家カナダの縮図のような場所](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/11-P9230045-1024x576.jpg)
オンタリオ州の発電量の32%は、再生可能エネルギーによって生成
Y ところで、カナディアン・ソーラーの本社は、オンタリオ州のウエスト・ゲルフにあります。今日はそのご縁もあり、現地のエネルギー事情についても伺いたいと思います。カナダは世界有数のエネルギー資源国にもかかわらず、クリーンエネルギーの先進国としても注目されています。その背景にあるのは?
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P カナダでは、エネルギー政策は各州政府にゆだねられておりますので、ここではオンタリオ州の事情をご紹介したいと思います。オンタリオでは2009年に、再生可能エネルギー生成の増大と省エネ促進、クリーンエネルギーにかかわる仕事の創出を目的に、「オンタリオ・グリーン・エネルギー法」を定め、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)を導入しました。これにより、再生可能エネルギーは、オンタリオの電力供給のキーエレメントとなり、以来この分野では北米のリーダー的存在となっています。オンタリオ州全体の発電量に対して、水力、風力、太陽光、バイオエナジーからなる再生可能エネルギーの発電量は、2005年の22%から2015年には32%へと増大しました。発電設備容量に関していえば、2005年の26%から、2015年は40%までに増えています。
![オンタリオ州の太陽光による発電量はカナダ国内でもトップクラス](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/13-Light-I-2126x1595-1-1024x576.png)
![オンタリオ州ロンドンには、244枚のソーラーパネルや電気自動車の充電施設を備えた公園「グリーンエネルギー・パーク」も](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/14-564906_l-1024x576.jpg)
Y 驚きました。かなりの急成長で、しかも大きな割合で実現されていますね。日本でも2012年よりFIT制度を開始しましたが、正直、まだ再生可能エネルギーの占める割合は大きいとはいえません。(日本では2014年時点で約12%・エネルギー庁調べ)。
P オンタリオの場合は、水力に頼る部分がかなり大きいですね。というのも、州内には北米五大湖をはじめ25万以上の湖がありますから。世界全体の淡水の5分の1が、ここに集中しているのです。また、太陽光、風力のいずれも発電量はカナダの中ではトップクラスです。太陽光発電では、約2200MWの発電量があり、これは一般家庭約30万軒分の電力を補えるといわれています。さらに2014年の4月には、北米で初めて、石炭による発電の廃止も実現しました。北部にある石炭発電所がバイオマス用ウッドチップ工場に転換されるなど、ユニークな試みが行われています。
Y 石炭からバイオマスへ。それは世界でも初めての例ではないでしょうか。かなり思い切った、斬新なアイデアです。クリーンエネルギーの分野でも、オンタリオに学ぶことは本当に多そうです。今世界は、地球温暖化を防止するため、様々な努力を行っていますが、こうした試みはとても大切ですね。我々は、太陽光発電という、地球温暖化のスローダウンに役立つ仕事に携わっていることを大変誇りに思っております。加えて、素晴らしい自然をもち、クリーンエネルギー推進を行っているオンタリオ州に本社をもつ会社として、少しでもそのエコロジカルなスピリットを日本で伝えていきたいと思います。建国150周年という記念すべき年を機に、いろいろお話をうかがい、改めてそう実感しました。
P カナダも日本も、空気がきれいで、水がおいしい国です。その恵まれた美しい自然を、ぜひ守っていきたいものです。
![水資源も豊富なオンタリオ州。ナイアガラの滝近くにも巨大な水力発電所がある](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/15-1-1024x576.png)
![マスコーカ地方やアルゴンキン州立公園など、レイクリゾートも豊富](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/17-_MG_4271-1024x576.png)
![オンタリオの中部から北部にかけては、森の中、大小の湖が点在する](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/16-muskoka-1024x576.png)
![恵まれた環境の中、自然派のワイナリーも急増中](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/18-1024x576.png)
Y パデューさんは、日本酒の酒蔵巡りがお好きと聞いています。今度は一緒にお酒でも飲みながら、さらにお話を聞かせてください。
P いいですね。お水のおいしいところにはいいお酒がありますからね。オンタリオにも素晴らしいワイナリーがあるので、現地のエネルギー事情視察を兼ねて訪れてみてください。
Y それは楽しみです。ぜひ実現したいものです。本日はどうもありがとうございました。
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デイヴィッド・パデュー氏
カナダ大使館参事官{商務} オンタリオ州政府駐日代表
カナダ連邦政府外務省外交官として在日カナダ大使館経済部二等書記官、在重慶カナダ総領事館領事を経て、2017 年5 月、カナダ大使館に内設するオンタリオ州政府在日事務所の代表として来日。学生時代より複数回日本に滞在経験をもつ。「私にとって今や日本は第2の故郷。日本人の他人への思いやりの心、また仕事であれ遊びであれ、細かいことにまでこだわる繊細さがとても好きで、日本にいるととても心地いい」と語る日本通。
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山本豊
カナディアン・ソーラー・ジャパン株式会社 代表取締役
東京大学工学部電子工学科卒業。(株)日本IBM大和研究所、(株)セガエンタープライゼス勤務を経て、1998年プラネットウェブジャパン(株)を設立。その後エボリューション・ロボティックスジャパン(株)、サンテックパワージャパン(株)の社長を歴任。2015年にカナディアン・ソーラー・ジャパン(株)代表取締役に就任。過去に2回、トータル8年間の駐米経験をもつ。
(対談 2017年6月)