大自然の国カナダ
Scenes of Canada
カナディアン・ソーラーのふるさとカナダの、豊かな自然や野生動物、素朴なライフスタイルなどをご紹介します。
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太陽の大地カナダ | 貴重な地球遺産、カナディアン・ロッキーの氷河
世界遺産カナディアン・ロッキーの高峰からゆっくりと流れ出す氷河。
その巨大な氷の塊が、今急速に起こっている地球の変化を、ありありと伝えてくれます。
大河の源となるコロンビア大氷原
カナディアン・ロッキーの人気観光地レイク・ルイーズとジャスパーをつなぐ国道93号線は、別名「アイスフィールド・パークウェイ」と呼ばれています。日本語で「氷河ハイウェイ」とも訳されるこの道路は、ロッキー山脈の谷間を貫いて約230㎞の長さで伸びており、その名の通りいくつもの氷河を路上からも眺めることができます。壮大な氷の川の麓を走る、カナディアン・ロッキーのハイライトともいえるドライブルートです。
そして、このアイスフィールド・パークウェイの最高地点付近から広がっているのが、コロンビア大氷原です。面積は約300㎢と、高知市や前橋市と同じくらいの大きさで、深さは最深部で365m。想像を超えるような巨大な氷が、3000mを優に超える高峰に抱かれています。この大氷原は北米の大陸分水嶺に横たわっており、氷河の解け水は、様々な川を経て北は北極海、西は太平洋、そして東はハドソン湾へと流れていきます。このため、「大河の母」(The Mother of Rivers)とも呼ばれ、広大なカナダを潤す源としても一目置かれています。
![氷河の中を走り抜けるアイスフィールド・パークウェイ](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/2-Scan10056-683x1024.png)
![コロンビア大氷原から流れ出すアサバスカ氷河。手前がアイスフィールド・パークウェイ。左下の建物は、ツアーなどを受け付けるディスカバリー・センター](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/3-o07-005313.jpg)
1万年前の氷河期から残る自然遺産
そもそも氷河とは、長年にわたって降り積もった雪が自らの重みで圧迫され、氷に変化したもの。先端部は、まさに川のようにゆっくりと大地を削りながら流れています。また氷河の面積が広く、山岳を含め地表を広く覆っているものは氷原、あるいは氷床とも呼ばれます。
これらは、南極やグリーンランドなどの極地、そしてロッキーなどの高山地帯だけに見られる貴重なもの。1万年以上前の氷河期から残っている、まさに地球の遺産ともいうべき氷です。残念なことに、今、世界各地にある氷河は縮小を続けています。国連環境計画(UNEP)の調査では、温暖化の影響で、2000年以降の氷河は1980年代の3倍のスピードで後退していると報告されています。
![雪が自らの重さで押しつぶされて氷河に](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/4-Scan10053-1024x576.png)
刻々と後退しつづけ、やがては…
実際、コロンビア大氷原の先端部のひとつであるアサバスカ氷河でもその例証は見られます。
氷河前のハイウェイ沿いには、氷河観光の基地としてディスカバリー・センターが建てられていますが、1937年にこれができたときには氷河は建物の前まで迫っていたといいます。現在、その先端ははるかかなたまで後退。氷原には毎年7mもの積雪がありますが、それでも氷はどんどん縮小しており、記録では、過去125年間で1.5㎞も後退したことが明らかになっています。そしてあと400〜500年で消滅してしまうとも…。
アサバスカ氷河では、特殊車両に乗って氷河の上まで行くツアーに参加することができます。
青白く光る氷の上に立ってみると、壮大な地球の営みに圧倒されずにはいられません。そして、この景観をどうしたら守れるのか、そのために何ができるのか、そんな思いで胸がいっぱいになります。
![アサバスカ氷河に向かうトレイル。1982年には氷河の先端はここに](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/5-IMG_2751-1024x576.jpg)
![特殊車両スノーコーチでアサバスカ氷河の上に行くツアーも](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/6-o07-005315-1024x576.png)
![氷河が削った谷間を覗き込むグレーシャー・スカイウォークも人気](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/8-o13-009076-1024x576.png)
![スノーコーチのツアーでは氷河の上に降り立つことも可能](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/7-o11-005322-1024x576.png)
ロッキーに残る様々な形の氷河
カナディアン・ロッキーには、コロンビア大氷原以外にも様々な氷河が点在しています。
たとえばビクトリア氷河。標高3459mのビクトリア山を広く覆っており、その解け水によって、麓には鮮やかな湖レイク・ルイーズが広がっています。氷河湖特有の目が覚めるようなブルーの湖水と、断面を見せる氷河との見事なコンビネーションが、「ロッキーの宝石」とも賞賛される絶景を作り出しています。
また、その少し北にあるクロウフット氷河もユニーク。これはワプタ氷原から流れ出しているもので、かつては先端部が3つに分かれ、名前どおり「カラスの足」を思わせる形をしていました。ところが一番下の〝爪〞の部分が崩れてしまい、現在の足は指2本が残るのみに。それでも岩肌をつかむように長く伸びた氷河は見事。麓にはやはり、その解け水でできたボウ・レイクが美しい水をたたえており、ロッキー有数の景観を見せています。
形の面白さでは、ジャスパーの名峰エディス・キャベル山に残るエンジェル氷河も有名です。ゴツゴツとした岩肌に張り付くように流れており、下から眺めると、まさに天使が羽を広げたような形に見えます。
![レイク・ルイーズ。正面に見えるのがビクトリア氷河](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/9-d11-005054-1024x576.png)
![天使が羽を広げたような形のエンジェル氷河](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/10-Scan10054-683x1024.png)
![かつては3本の指があったクロウフット氷河](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/11 shutterstock_46132501.jpg)
氷河に迫って実感する地球の大切さ
カナディアン・ロッキーの中には、たくさんのハイキング・トレイルが整備されていますが、これら氷河の周辺にも人気コースが伸びています。湖の周りを歩いたり、高台から全景を眺めたり、また氷の先端まで迫ったりと、自分の足で歩き、様々なアングルでその景観を堪能することができます。絶景の中、氷河に1歩1歩近づくようなハイキングを体験すると、自分がその風景の一部に溶け込んでいくような実にダイナミックな気分になります。
悠久の時を経て作られ、そして今消えようとしている氷河。地球の様々な情報を教えてくれるその貴重な存在を、ぜひ一度目の当たりにし、全身で感じてみてはいかがでしょうか。
![レイク・ルイーズとその周りの氷河を一望するトレイルも](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/13-Scan10060-682x1024.png)
![カヌーで湖の上から氷河を眺めるのもおすすめ](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/12-a11-000404-1024x576.png)
![](https://csisolar.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/08-rockies.gif)
Text: Hiroko Yoshizawa
Photo: Satoru Seki, Travel Alberta(George Simhoni), Paddy Pallin, Chris Moseley, Banff Lake Louise Tourism,
Brewster Travel Canada, Mary Terriberry/ Shutterstock.com