Canadian Style 太陽とともに - カナディアン・ソーラーのウェブマガジン

Scenes of Canada

カナディアン・ソーラーのふるさとカナダの、豊かな自然や野生動物、素朴なライフスタイルなどをご紹介します。

太陽の大地カナダ | スコーミッシュ 海と山が迫るネイチャーゾーン

カナダ西海岸の中心都市バンクーバーと、北米最大級のスキー場ウィスラー、その中間地点にあるのがスコーミッシュです。
目の前には穏やかなハウ海峡、振り返れば氷河を抱いた山岳地帯。
海と山の壮大な自然の中にたたずむ街です。

バンクーバーから1時間のダイナミックな自然地帯

バンクーバーから「シー・トゥ・スカイ・ハイウェイ」(海から山へのハイウェイ)と呼ばれる国道99号線を1時間ほどドライブしたあたりに、スコーミッシュの街は広がっています。爽やかな太平洋の海岸線を走っていた道路は、このスコーミッシュから内陸部へと進路を変え、氷河を抱いたコースト山脈へと入っていくため、まさにここは風景が「海から山へ」と変わる地点。もちろん街自体、海と山の大自然を享受できる、大変恵まれた環境にあります。

スコーミッシュを訪れると、まず驚かされるのは、海岸線からいきなりそびえ立つ岩山スタワマスチーフの威容です。垂直に切り立った絶壁は巨大で威圧感があり、恐ろしいほど。ロッククライミングのスポットとして世界的に知られ、岩に張り付くように登るクライマーの姿もしばしば見られます。

一帯はスタワマスチーフ州立公園として保護され、その背後に広がるガリバルディ州立公園と共に、壮大な森林、山岳地帯を形成。クマやクーガー、コヨーテなど野生動物の宝庫ともなっています。また近年ではスタワマスチーフのすぐ背後にそびえる山にゴンドラで一気に上り、ハウ海峡の絶景を眺めることができるアトラクション「シー・トゥ・スカイ・ゴンドラ」も登場。多くの観光客が訪れるようになりました(2020年春まで運休中)。

町の背後には氷河を抱いた山岳地帯が続く
町の背後には氷河を抱いた山岳地帯が続く
ハウ海峡を見渡す岩山スタワマスチーフ。海岸線に伸びているのはシー・トゥ・スカイ・ハイウェイ
ハウ海峡を見渡す岩山スタワマスチーフ。海岸線に伸びているのはシー・トゥ・スカイ・ハイウェイ
スタワマスチーフでのロッククライミングは世界的に有名
スタワマスチーフでのロッククライミングは世界的に有名
シー・トゥ・スカイ・ゴンドラでハウ海峡を眺める山頂へ
シー・トゥ・スカイ・ゴンドラでハウ海峡を眺める山頂へ
吊り橋や展望台などが楽しめる
山頂では、吊り橋や展望台などが楽しめる

2000羽のハクトウワシが集まるイーグルウォッチング・スポット

一方海岸エリアはというと、スコーミッシュ川をはじめとするいくつかの川が流れ、河口付近を中心に湿地帯やリパリアンと呼ばれる栄養豊かな土手を作り、多くの水生動物や植物を育んでいます。200種類以上の野鳥が観察できるバードウォッチング・パラダイスでもあり、特に水辺に広がるブラッケンデール・イーグルズ州立公園はハクトウワシの集合地として有名。毎年11月頃から、川を遡上してくるサケを狙ってハクトウワシが南下し、多い時には2000羽もがこの一帯で越冬します。

華やかなバンクーバーとウィスラーに挟まれ、これまで旅行者にはあまり紹介されずにきたスコーミッシュですが、実は海と山の自然が双方とも楽しめるとても贅沢な場所。素通りしてしまうのはもったいない、素晴しい景観や体験がここには溢れています。

ブラッケンデール・イーグル州立公園ではたくさんのハクトウワシが越冬
ブラッケンデール・イーグル州立公園ではたくさんのハクトウワシが越冬
街外れにあるシャノン滝。この景観にもハイウェイから簡単に立ち寄れる
街外れにあるシャノン滝。この景観にもハイウェイから簡単に立ち寄れる

ローカルの情熱が活きるバイクパラダイス

スコーミッシュは、農業と林業、鉱業、さらにそれら資材の積み出し港として発展してきました。バンクーバーやウィスラーという有名都市の間にありながらも、観光開発され過ぎず、どことなく素朴でローカルが主役の街といった雰囲気が漂っています。

とはいえ、この恵まれた環境に惹かれて他所から移り住む人も多く、人口は急増中。大都市に近く、自然豊かで、生活するには理想的、というわけでかなりの人気地となっています。また住みやすさだけでなく、アウトドアを存分に楽しむライフスタイルを求めてやってくる移住者が多いのも特徴です。

スタワマスチーフの麓、ハウ海峡に面して広がる緑豊かな街
スタワマスチーフの麓、ハウ海峡に面して広がる緑豊かな街

スコーミッシュに数あるアウトドアスポーツの中でもとりわけ人気が高いのは、マウンテンバイクです。一帯には初心者向けから上級者向けまで、数え切れないほどたくさんのトレイルが伸び、世界的に注目されるほどの規模になっています。

けれどこれが商業目的で作られていない点が、スコーミッシュらしいところ。驚くことにこれらのトレイルは、25年ほど前から、地元のファンによる非営利団体SORCAによってボランティアベースで切り開かれてきたといいます。彼らは自分たちが楽しめるトレイルを造りたい、という純粋な目的で地権者と交渉し、自分たちが愛する環境を守りながら、次々と新しいコースを造成してきました。

この活動とトレイルの充実度に惹かれ、多くのライダーが移り住み、今やスコーミッシュはマウンテンバイクファンの聖地のようになっています。現在ではSORCAのメンバーは約1700名に拡大。活動費は彼らの会費と自治体、地元企業からのサポートによって支えられています。商業施設ではないので、旅行者などメンバー以外のトレイル利用に際しては使用料の規定はなく、寄付金として「トレイルサポーター・パス」の購入が推奨されているのみです。

地元のライダーたちが造り上げた、魅力あるバイクトレイルが伸びる
トレイルは初心者向けから超上級者向けまで充実
トレイルは初心者向けから超上級者向けまで充実

静かな自然の中で、思う存分アウトドア体験を

スコーミッシュでは他にも、ハイキングやカヌー、カヤック、SUP、ウィンド&カイトサーフィン、ラフティング、フィッシング・・・とアウトドア体験の種類は大変豊富。冬もクロスカントリースキーからスノーシュー、スノーモビル、バックカントリースキーなど、さまざまに楽しめますが、これらもやはり〝ローカルファースト〞で行われている印象があるのがおもしろいところ。地元のアウトフィッターやスポーツギアのレンタルショップなどでは、誰もが参加できるガイドツアーも行っていますが、どこに行っても旅行者で混み合うような事はほとんどありません。

人気アトラクション「シー・トゥ・スカイ・ゴンドラ」の登場によって、観光客も増えているスコーミッシュですが、これまでの穴場的アウトドア天国という状態は、今のところ大きくは変化していない様子です。観光化されていない静かな自然の中で、存分に楽しみたい、そんな本来のアウトドア体験を求める人には、理想的な場所ではないでしょうか。

フィッシングやカヌーなど水辺の楽しみも豊富
フィッシングやカヌーなど水辺の楽しみも豊富
春から秋にかけては、至る所がハイキングスポットに
春から秋にかけては、至る所がハイキングスポットに
観光化がさほど進んでいない静かな環境の中、大自然に浸ってみては
観光化がさほど進んでいない静かな環境の中、大自然に浸ってみては

スコーミッシュの大自然の中でアウトドアを学ぶチアカマス・センター

スコーミッシュの郊外にあるチアカマス・センターは、樹齢数百年の木々が茂る広大な森の中で、アウトドアと自然、環境について学べる施設。大自然の中に出て動植物の生態系や実践的なアウトドア技術などを学ぶフィールドワークと、クラスルームやシアター、先住民の集会所「ロングハウス」などでさらに知識を深める座学やワークショップとを組み合わせたさまざまなプログラムを実施しています。対象は子供から大人まで。グループでの参加が基本となっており、海外からの参加もOK。キャビンに滞在しながらじっくり学ぶ数日間のコースもあります。
Cheakamus Centre

国際的な環境性能評価システムLEEDのプラチナ建築として認証されたラーニングセンター
国際的な環境性能評価システムLEEDのプラチナ建築として認証されたラーニングセンター
苔むした森を舞台に実践的なアウトドア学習が可能
苔むした森を舞台に実践的なアウトドア学習が可能

Photo: Tourism Squamish, Ian Robertson / © Ian Robertson Photography, Tara O’Grady, Garry Broekling www.dcs.biz, Destination BC/Alex Guiry, Shuttestock, Chris Christie / CHRISTIE-IMAGES.COM, Chris Christie, H. Owada