Canadian Style 太陽とともに - カナディアン・ソーラーのウェブマガジン

Scenes of Canada

カナディアン・ソーラーのふるさとカナダの、豊かな自然や野生動物、素朴なライフスタイルなどをご紹介します。

太陽の大地カナダ | 地球のアート、ナイアガラの滝

世界三大瀑布の一つに挙げられるナイアガラの滝。
大自然のみが創造できるその造形は、訪れる者の心を揺り動かすパワーを持っています。

神格化された地名が語源

北米五大湖のエリー湖からオンタリオ湖へと流れるナイアガラ川。カナダとアメリカの国境線にもなっているこの川の中間地点にあるのが、ナイアガラの滝です。
エリー湖から流れてきた水は、川の中州にあるゴート島で2分され、そのまま「カナダ滝」、「アメリカ滝」に分かれて流れ落ちていきます。このふたつを総称してナイアガラの滝と呼びますが、ひときわ有名なのは、深くえぐれて馬蹄形をしたカナダ滝。落差53m、幅670mという巨大な岸壁から、すさまじい量の水が雷のような轟音とともに落ちていく様子は、圧倒的な迫力です。まるで滝そのものが生きているかのようで、思わず足がすくみ、言葉を失うほど。古くからこの地に暮らしてきた先住民は、その威容や音を恐れ敬い、「オンギアーラ」(とどろく水)として崇めてきたと言います。ナイアガラという名前は、そんな神格化された地名が語源となっています。

馬蹄形をしたカナダ滝とまっすぐに落ちるアメリカ滝
馬蹄形をしたカナダ滝とまっすぐに落ちるアメリカ滝
先住民に崇められてきた神聖な場所
先住民に崇められてきた神聖な場所

生き物のように動き続ける滝

ところで、この巨大なナイアガラの滝が、自らの浸食作用で常に動き続けているのをご存知でしょうか。滝が誕生したのは、約1万2千年前。最後の氷河期が終わり、膨大な氷の溶け水が流れ出て、川ができ、途中にあった断層部に滝ができました。その位置は、現在の場所からなんと11㎞も下流。そこを出発点に、岸壁は膨大な水のパワーによってどんどん削られ続け、1年に1mのペースで後退。滝はじわじわと上流に向けて移動してきたのです。
現在、滝の浸食はごくわずかになっています。1950年代以降、ナイアガラ川流域に発電所やダムなどが建設され、これらの施設を守るためにも水量が調節されるようになりました。これにより、現在の後退スピードは、1年で3㎝程度に。それでも滝は今も確実に、上流に向かって動き続けています。
滝からナイアガラ川沿いに走る道路を11㎞下っていくと、最初に滝ができた地点を見ることができます。そこから滝まで続く茶色い岸壁こそ、滝が長い年月をかけて削り取っていった跡です。
迫力満点の滝自体はもちろん、その周辺でもこうして、自然の力、悠久の地球の営みを感じずにいられないユニークな地形の数々を見ることができます。

怒涛のごとく流れ落ちる水は圧倒的な迫力
怒涛のごとく流れ落ちる水は圧倒的な迫力
展望台「テーブルロック」からは滝が流れ落ちる様子を目の当たりに
展望台「テーブルロック」からは滝が流れ落ちる様子を目の当たりに
ここで滝が生まれ、大地を削りながら上流へ移動
ここで滝が生まれ、大地を削りながら上流へ移動

滝周辺には、迫力のアトラクションが満載

南米イグアスの滝、アフリカ南部ビクトリアの滝と並び、世界三大瀑布のひとつに挙げられるナイアガラの滝。ここは、これら3つの中でもっとも訪れやすい滝として人気があります。入口となるのは、日本からの直行便も飛んでいるトロント国際空港。ここから車やバスに乗って2時間ほどで滝までアクセスすることができます。また、経由便になりますが、アメリカのバッファローまで飛べば、空港から滝までは、車で30分程度という近さ。
このアクセスのよさもあり、ナイアガラの滝周辺は古くから観光地として発展してきました。一帯には滝を楽しむためのアトラクションも充実。滝壺まで遊覧船で突入できる「ホーンブローワー・ナイアガラ・クルーズ」や、トンネルで地下に下り、滝の真横や真裏からその迫力を体験できる「ジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズ」などは大人気。さらには観覧車に乗っての見物やヘリコプターでの遊覧飛行、滝の伝説や歴史を紹介するシアターまであり、滝をテーマに様々なスタイルで過ごすことができます。

「ホーンブローワー・ナイアガラ・クルーズ」のボートで滝壺へ
「ホーンブローワー・ナイアガラ・クルーズ」のボートで滝壺へ
滝を真横や裏側から見学できる「ジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズ」
滝を真横や裏側から見学できる「ジャーニー・ビハインド・ザ・フォールズ」
夜にはライトアップされた滝や花火を眺めながらのクルーズも
夏季のナイトクルージングでは、花火が楽しめることも

滝に感動した後はワインと美食を堪能

また滝以外の楽しみも豊富です。たとえばワイン。1970年代以降、ナイアガラ一帯ではワイン作りが盛んになりました。この地域の冷涼な気候とミネラル豊富な土壌が、ヨーロッパ種のシャルドネ、カベルネ、ピノノワールなどのワインブドウの生産に適しており、今では周辺に60カ所以上のワイナリーが点在するカナダ随一のワイン産地となっています。いずれも家族経営中心の小規模施設で、丁寧に手作りされる希少ワインは、世界各地のワインコンクールで高い評価を得ています。さらにこの周辺は、古くからフルーツや野菜などの産地としても知られており、新鮮な食材はとにかく豊富。健康的な地元の材料を活用した料理「ナイアガラ・キュイジーヌ」を出すレストランも数多くあり、グルメエリアとしても注目を集めています。
世界的に有名な滝を訪れ、その迫力に感動。そして豊かな大地に点在するワイナリーを訪れ、ワインとおいしい食事に舌鼓…。中身の濃い、一生の思い出になるような旅が堪能できる場所と言えるでしょう。

オーガニック農法や自然農法でブドウを育てるワイナリーが急増中
オーガニック農法や自然農法でブドウを育てるワイナリーが急増中
冬の厳寒期に凍ったブドウ果実を収穫して作る甘いアイスワインも大人気
冬の厳寒期に凍ったブドウ果実を収穫して作る甘いアイスワインも大人気
ナイアガラ・キュイジーヌと地元ワインが楽しめるレストランも充実
ナイアガラ・キュイジーヌと地元ワインが楽しめるレストランも充実
ブドウ畑などのどかな田園風景の中には雰囲気のいいB&B や小規模ホテルが点在
ブドウ畑などのどかな田園風景の中には雰囲気のいいB&B や小規模ホテルが点在
滝の近くには、イギリス統治時代の面影を残すナイアガラ・オン・ザ・レイクの街も
滝の近くには、イギリス統治時代の面影を残すナイアガラ・オン・ザ・レイクの街も

ナイアガラの詳しい情報はこちら

Text: Hiroko Yoshizawa

Photo: H.Y., Satoru Seki, OTMPC/R.Pierre