Canadian Style 太陽とともに - カナディアン・ソーラーのウェブマガジン

Scenes of Canada

カナディアン・ソーラーのふるさとカナダの、豊かな自然や野生動物、素朴なライフスタイルなどをご紹介します。

陽だまりInterview | 「自然の中で何かを発見して感動する。その新鮮な体験をシェアしたい」

オンタリオの自然をこよなく愛し、その豊富な経験と知識を多くの人と共有すべく、様々なアウトドアプログラムを提案するナチュラリスト。幅広く活躍しながらも常に大好きな森や湖と向き合い続ける、その根底にあるのは、少年のころから変わらぬあくなき好奇心のようです。

ロビン・タプレーさん Robin Tapley
1961年、オンタリオ州マスコーカ生まれ。動物、植物、地質、天文など、幅広い分野に精通するナチュラリスト。オンタリオ州各地の自然体験を提供する「ネイチャー・トレイルズ」を主宰。リゾートのエコロジー・プラニングや、州立公園などの自然保護プログラム、アウトドアプログラムのアドバイザーとしても活躍。
www.tapleynaturetrails.ca

風景の雄大さや静けさに感動する、そのひとときを分かち合うのが好き

― ロビンさんの会社「ネイチャー・トレイルズ」では、とてもユニークなアウトドアプログラムを提供されています。ロビンさん自身がガイドをされることが多いと伺いましたが、自然を楽しむ際のポリシーのようなものはあるのでしょうか。

ロビン・タプレー(以下R)自分の地元がオンタリオ州のマスコーカなので、そこをベースに小さなグループ向けのプログラムを作っています。たとえば近くにあるアルゴンキン州立公園での野生動物ウォッチング、ジョージアン・ベイ(ヒューロン湖)を高速ゴムボートで巡り無人島でキャンプをするツアー、森の中に設置された天文台での星空観察、冬は星を見ながらのスノーシュー・トリップなんていうのもあります。決まりきった行程を型通りにこなすのでなく、参加する人と相談しながらフレキシブルに内容をアレンジしています。

自分でデザインした天文台で星空観察プログラムも提供
自分でデザインした天文台で星空観察プログラムも提供
ジョージアン・ベイに高速ゴムボート「ゾディアック」で繰り出す
冬のアルゴンキン州立公園で、スノーシューを履き雪の中の森を観察
冬のアルゴンキン州立公園で、スノーシューを履き雪の中の森を観察
ジョージアン・ベイに高速ゴムボート「ゾディアック」で繰り出し、無人島へ上陸
無人島へ上陸
雪の上で火を起こすなど、サバイバル術なども伝授するプログラムも
雪の上で火を起こすなど、サバイバル術なども伝授するプログラムも

― アウトドア初心者でもOKなのですか。

Rむしろそういう参加者の方が多いですね。カナダ人もみんながアウトドアエキスパートというわけではないのですよ(笑)。カナダの自然に触れたいと、外国から参加する方も多いですし。僕はむしろ、自然に馴染みのない人と自然の中での時間を共有するのが好きなんです。森の雄大さに驚いたり、湖の静けさに浸ったり、一緒に何かを発見して、感動して、そういう新鮮な体験をシェアしたい。

自然の中では日常を忘れ、とてもシンプルな存在になれる

― 地元では「ネイチャーナッツ」(自然オタク)というニックネームで、しばしばメディアにも登場されていますね。昔から自然が好きだったのですか。

Rマスコーカで育ったので、周りは自然だらけ。子供の頃から外に出るのが大好きでした。野生動物、野鳥、草や木、星…そういった目に入るものを、手当たり次第観察するのが好きだったんです。そして面白いものを見つけると、それについてとことん知りたくなる。実際質問ばかりする子供だったですね。しまいには親も答えられなくなっていましたが(笑)。

子供の頃から観察してきたマスコーカの自然
子供の頃から観察してきたマスコーカの自然
今も子供時代と変わりない新鮮な目線で自然と向き合う
今も子供時代と変わりない新鮮な目線で自然と向き合う
冬、アイスフィッシングにも思わず夢中に
冬、アイスフィッシングにも思わず夢中に
森の中でテントを張って料理をして、そんなシンプルなことが面白い
森の中でテントを張って料理をして、そんなシンプルなことが面白い

― 本当に博学で、カレッジでナチュラルヒストリーについて教鞭をとっていたこともあるロビンさんですが、堅苦しい感じは全くしません。一緒にハイキングをしている時など、なんだか子供同士で遊んでいるような気分になります。

R確かに、僕の行動は子供の頃とあまり変わっていないかもしれません。自然の中ではあちこちに目を奪われながら、心の赴くままに動いている。それが仕事であれ、遊びであれ。時間があればプライベートでもキャンプに行きます。森の中で場所を探して、テントを張り、火を焚いて食事を作って食べ、そして疲れて寝る。そういう人間のベーシックな行動をしていると、日常の些末なことなどどうでもよくなる。周りの植物や鳥や石など、目に付くものだけ、そして聞こえてくる音だけに反応してね。シンプルな存在になれるのが好きです。

自然を楽しみながら知識を増やす、究極のアウトドア体験を

― 国立公園や州立公園のアドバイザーもされていますね。

Rカナダでは、環境保護の意識は、まず自分で自然を体験してその素晴らしさや貴重さを実感することから育てられるという考え方があります。州立公園や国立公園でも、ガイドハイキングや、動物観察など、様々なアウトドアアクティビティを積極的に提供して、より多くの人に楽しんでもらおうという試みが行われています。僕はそのプランニングのお手伝いしています。

アルゴンキン州立公園の美しい森を舞台に野生動物観察を
アルゴンキン州立公園の美しい森を舞台に野生動物観察を
ムースなどを目の当たりにし、じっくり探究する感動を多くの人に
ムースなどを目の当たりにし、じっくり探究する感動を多くの人に
体験を通じて自然の素晴らしさを実感できるプログラムを提案
体験を通じて自然の素晴らしさを実感できるプログラムを提案

― 今年はアルゴンキン州立公園と協力して、面白いプログラムをスタートさせるのだとか。

Rそう、ずっと温めていたアイデアがついに実現します。アルゴンキンの奥地に、野生動物を観察するために政府専門機関などが使ってきた「ワイルドライフ・リサーチ・ステーション」という施設があります。1944年に設立され、自然観察施設としては、カナダで最も古いもののひとつで、価値のある施設として知られています。ここを使って、一般の人が自然を体験できるようなプログラムを作りました。具体的にはここへ1泊か2泊し、ムース、クマ、オオカミ、ビーバーなどの動物観察をし、生態や習性、環境などについて学ぼうというもの。動物や自然を見るだけでなく、じっくり探究できるスペシャルプログラムになっています。

― ロビンさんの子供の頃からの研究の仕方と同じですね。見たもののことをもっと知りたくなり、調べつくす。

Rそうです。でも学者のお勉強という感じではありません。大自然を楽しみながら知識欲も満たす。究極のアウトドア体験になるのではないでしょうか。写真家、ナチュラリストといった方たちはもちろん、自然に興味がある幅広い層の方に、ぜひ参加してほしいですね。

自然に触れ、そしてもっと深く知る、その楽しさを知ってほしい
自然に触れ、そしてもっと深く知る、その楽しさを知ってほしい

Photo: Hiroko Yoshizawa